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by merrygoround515

『東京物語』 奥田 英朗  ノスタルジック…

東京物語 (集英社文庫)
奥田 英朗 / / 集英社
スコア選択: ★★★★





80年代、名古屋の田舎から上京し、東京で暮らす青年
田村久雄の青春グラフティ。
本書は18歳~30歳目前までを断片的に綴った
6編の連作短編集だ。

連作短編なのに一話一話の繋がりが、繋げ方が、
もう上手すぎる。 奥田氏天才ですね。


先ず21歳の田村久雄からはじまる。
世間ではジョン・レノンが殺されたと騒いでいる時
「忙しくてそれどころじゃない」と言い放つ(笑)
彼は一応、駆け出しコピーライターなのだが、
社内でこきつかわれまくりの雑用社員だった。
若さには、強靭なパワーがあったなぁ~!
と、思いながら読み進むと… 

次いで18歳の上京、浪人生活。
そのまま19歳の大学生活に展開する。
因みに背景は…
18歳では、キャンディーズの解散コンサート。
19歳では、江川卓がプロ初登板を。

この遡り方は、実に上手い!!!

読者は大学生である久雄が、この後中退を余儀なくされ…
寝る間もないほど多忙な日々を送ることを知っているのだ。

ちょっと切なくなる19歳に思いを寄せていると…
次には、いきなり22歳になっている。

これがまた最高!

一年前の21歳、あんなにこき使われていた久雄が
部下を持ち、お山の大将気取り(笑)
自信過剰で、常に己の若さをマイナスと考えている。
早く25歳になりたいと気を病む、天狗くんだ。
読んでいて「おい、おい」って声出してしまった。
でも、よく分かる。
若くして仕事を任され、即戦力として過大評価を受ければ…
実力主義社会は、初心を忘れる世界だもん。ね。
ここでの背景、
オリンピック候補地争いが、またいい味をだしている。

その後、久雄は25歳に。
プロダクションは辞めており、独立。
フリーのライターを生業に、仕事も順調だ。
それなりに満足した人生を歩んでいる。
が、ここでは名古屋に住む久雄の母、母の友人、その娘…
と、女性の話に終始していた。
面白い。
名古屋人とは? 答えの全てが書いてあるわ(笑)
背景は、新日鉄釜石(ラグビー)が七連覇を達成し
角界では、北の湖が引退をした。

ラストは、29歳。二週間後に30歳の設定だ。
私はこの「バチェラー・パーティー」が一番好き。
背景で描かれるバブル期、ベルリンの壁崩壊…
久雄の仕事とも相まって、しんみりさせれられた。
友人の結婚前夜と、歴史的な大事件との絡め方が
絶妙でした。



ギリギリ同世代といえる私は、共鳴しっ放しだった。
本書の魅力は、何といっても時代背景。
主人公を取り巻く仲間や、仕事環境もそこそこ楽しめるが… 
歴史には勝てなかった(笑)

こういった時代を色濃く扱った作品に出会うと
自分の人生も振り返ってしまいますね。

残念ながら、若い世代の方には…もしかしたら
好き嫌いが出てしまう作品かも。
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by merrygoround515 | 2007-06-27 09:36 | Book