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読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『コンビニ・ララバイ』 池永 陽   絶妙なリアル感。。。

コンビニ・ララバイ (集英社文庫)
池永 陽 / / 集英社
ISBN : 4087478297
スコア選択: ★★★★




最愛の息子をひき逃げで亡くし、
続けざまに交通事故で妻を亡くした男が
妻子の死を引きずったまま… 
無気力にコンビニを営んでいる。
そのコンビニ「ミユキマート」を舞台に人生を語る
7つの物語。連作短編集。

暗い。全体的に暗い。
妻子の死が、底辺にこびり付いているからなのか…
主人公堀幹郎の持つ雰囲気があまりに暗くて。
読み出しはしばらく引いてしまった。
個人的に好きではないタイプの店主でもあり…。

そんな主人公を取り巻く、
ミユキマートに勤める治子、常連客の老若男女。
皆が其々に抱える実生活には、上手く言えないが
生きることの「一生懸命」を考えさせられた。 深いんだ…。

はっきり言って、本書は私の中で
それほど記憶に残らない作品になるのかも知れない。
だが、様々な人生模様が、心に沁みたのは確かだ。
とにかく、どの人生もリアルなのだ。

飲み屋で意気投合した、見知らぬ人が…
自らの人生を語り出す… 私は隣で昔話に耳を傾ける…  
そんな雰囲気に包まれた作品。 語り部がいいんだ。

聞きながら、ふっと頬を涙が流れ、苦笑い。
また時には…相手を抱きしめたくなったりして…。
そんな風に、作中の登場人物が、とても身近に感じた。


物語に、型にはめた結論や結末がないことが、素晴らしい。


また生きる辛さの中に、優しさが溢れていた。
「悲しくも温かい」というのが、本書にぴったりだ。
私が嫌いだと感じていた、店主・幹郎を、知らぬ間に応援し、
彼の持つ雰囲気を次第に心地よく感じていたのだから。


強いて上げるなら、7つのうち第四話の「パンの記憶」がいい。
by merrygoround515 | 2007-08-14 11:05 | Book