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by merrygoround515

『西の魔女が死んだ』 梨木香歩  中学生は必読の書!

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
梨木 香歩 / / 新潮社
ISBN : 4101253323
スコア選択: ★★★★





一人の少女「まい」の成長物語。
本書は児童文学なのだそうです。
児童には、最高の贈り物になる作品です。
でも、児童だけでは勿体無い!
大人の方にも、大人にこそオススメです。
素晴らしい処方箋。本書の癒しは、極上です。


まいは、中学一年生にして、学校での人間関係に恐れ、悩み、
とうとう学校へ行けなくなってしまった。
母親は祖母の元へ、まいを預けることにしました。
物語は二年前の初夏から一ヶ月余りの出来事です。

主人公・まいの祖母は英国人であり、
祖母のそのまた祖母は、予知能力を持っていたという。
どうやら祖母にもその力が、ちょっぴりあるらしい。
そんな祖母のことを、まいは「西の魔女」と呼んでいます。

果たして「西の魔女」の元で、まいの魔女修行が始まりました。
しかし、この物語はファンタジーではありません。

魔女とは、ひと言で言うと 
「自分の意志で、考えて、生きる」 人のことなのです。
自分の意志で、正しいと思うことを選択し、
それを受け止め、挫けない精神力を持つことなのです。

祖母とまいは、本当にささやかな日常を過ごします。
ジャム作りをしたり、エプロンを作ったり、
鳥の卵をとってきては食べ、紅茶を飲み、過ごす…。
洗濯は踏み洗い。 洗濯機などありません。
お気に入りの場所を見つけ、読書をする。
とても静かで、そう、質素な生活です。
そうやって、自然とともに暮す日常を過ごしていくうちに、
まいは内面から、少しずつ成長していくのです。

まいの心を苦しめるのは人間です。
学校のクラスメイトとの人間関係や、
祖母の近所に住むゲンジさんの言動、
人の心の中にある嫌な部分が、まいを苦しめているのです。
そんなまいに、祖母がアドバイスするのは、
簡単に言うと「自分で判断しなさい」ということ。
恨みや憎しみに支配されることは、ただ疲れるだけなのだ、と。
それが魔女になるための練習なのだと説きます。

でも、まいにはどうしても嫌いな人がいて、
その人を庇う態度をとる祖母が、嫌でした。
その結果、祖母との言い合いとなってしまう。
心にしこりを残したまま、祖母の家を出ることになります。
わだかまりが解けぬまま別れた二人、
そして、二年の月日が過ぎ・・・

西の魔女が死にました。



祖母との暮らしを終え、新しく始まった生活の中で
まいは、素敵な友人を見つけました。
そのことからも、西の魔女から受けた訓練は、
実ったと言えるのでは、ないでしょうか。

おそらく現代の日本人の子供たちが
最も苦手とするのが、自分で考えて判断することでしょう。
皆がいい、と言うから…と、曖昧な理由で物事を決めてしまう。
それが間違った方向に進んでも、誰も止めない。
勇気ある人が、周囲と違う意見を述べれば、槍玉に。
いや、子供だけでなく大人社会にも、無きにしも非ずです。
これは日本人の悪いところだと、改めて感じました。

また、この作品はタイトルにもあるとおり、
「死」が大きな比重を占めています。
死んだらどうなるのか?と不安になり、恐怖に捕われる時期…
人には誰しも経験があるのではないでしょうか。
死ぬことを考え出すと、
底なしの闇にズンズンと引き込まれていくようで、
とにかくひたすら怖かった記憶が、私にもあります。
能天気な大人に成長した今では、考えられない繊細さだ(笑)
私はこの恐怖にとりつかれて、丸3日、眠れなくなったことがあるもの。

あの頃、この物語に出会っていたら
この作品を読むと"強さ"とは何なのか…が、
わかると思います。
死への恐怖など、本書に出会っていれば、
恐れるに足りないものです。
どんなに心強いことだろうか。

最後に西の魔女がまいに残した魔法は、最高の贈り物だ。
二年前の約束が、大きな深い愛が、まいを包み込みます。
「あばあちゃん、大好き」
「アイ・ノウ」




同時収録の「渡りの一日」
どうか本編読了後、すぐに読まず、翌日以降に読んでいただきたい。
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by merrygoround515 | 2007-10-10 13:30 | Book