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by merrygoround515

『終末のフール』 伊坂幸太郎

終末のフール
伊坂 幸太郎 / / 集英社
ISBN : 4087748030
スコア選択: ★★★★★






2×××年、8月15日。
「8年後に小惑星が落ちてきて地球が滅亡する」

そう発表されたあの日から、もう5年。
地球に残された時間は、あと3年だ。
自分の住む星ごと命の宣告をされて、人間はどう生きるのだろう?
まずは恐怖にあえぎ、その感情を怒りに変え、他人へと向ける者。
略奪、暴行、殺人。
そして恐怖に耐えられず、精神を冒されたり、自ら命を絶つ者。
そうして小惑星が到達する前に、地球の人口は激減したが、
荒々しい動きは収まり、つかの間の平和が訪れたのだった。

本書は、仙台市北部の”ヒルズタウン”という名の団地に住む、
来るべき終末に向かって、日々の暮らしを続けている、人々の物語。
肉親や友人を亡くし、生きているのが不思議な状況でありながら、
悲しみや、辛さを必死に乗り越えようとする人々…
これから自分たちが失うだろう未来を受容しようと覚悟をする人々…
そして、ユーモアも明るさも忘れずに、なにより希望を持って、
決して自分自身を見失わずにいる、8人の主人公たち。
彼らの懸命に生きる姿を描いた、8つの連作短編集。

初めはそれぞれ孤立していた彼らが、互いに触れ合い、
残りの短い時間を過ごすための意味を見つけていく。
友人や恋人や、何よりも「家族」の存在の大きさに、気づいていく。
「家族」が、色濃く反映されている特徴が、目立った作品。
見守る視線が、とてもあたたかで優しくて、
決して、泣ける小説ではないのに、じんわりと胸に込み上げて来る。

一番のお気に入りは「冬眠のガール」。
主人公の女性が、
父親の蔵書二千数百冊を読み終えるシーンから始まる。
彼女の両親は、地球滅亡に絶望し、彼女を残して心中…。
残された彼女には、三つの目標がある。
 ①両親を恨まない
 ②父親の蔵書を読破する
 ③死なない
そして、①と②を達成した今、新たにできた目標とは・・・。 


本書の装丁は、鈴木成一デザイン事務所。
作品同様、とても素敵。
ちなみに8編のタイトルは
  フール (馬鹿)
  シール (貼るシール)
  ビール (飲料水)
  ガール (少女)
  ウール (鋼)
  ヨール (これは読んでのお楽しみ!)
  オール (櫓)
  ポール (塔)
 ・・・と、すべて韻を踏んだもの。
こんなところにもユーモアの欠片は見え隠れ。

「伊坂幸太郎って、すげっ!」
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by merrygoround515 | 2007-09-27 12:10 | Book