読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『グロテスク』 桐野夏生

グロテスク
桐野 夏生 / / 文藝春秋
ISBN : 4163219501
スコア選択: ★★★





江戸川乱歩賞受賞(「顔に降りかかる雨」にて)作家であり、
『OUT』 では、出版から七年後に、米エドガー賞にノミネートされるなど、
国内外での人気を誇る方。  容姿は端麗で、知的美人。 
新刊を追っている作家さんの一人なので、発売当時(2003年)読みました。

本書のモチーフとなっているのは、「東電OL殺人事件」。
慶応大学経済学部を卒業し、東京電力という一流企業に勤務していた、
39歳のエリート女性の絞殺死体が、1997年3月に渋谷の円山町で発見された。
生前、彼女は売春行為を行っていたことが、明らかになった事件である。
この事件を取材し、題材に書かれた作品。

多分、私の読書人生史上…最高に疲れた作品。
また、ある意味強烈な印象が残ってる作品。

  
「勝ちたい、勝ちたい、勝ちたい。  一番になりたい。尊敬されたい。
 凄い社員だ、佐藤さんを入れてよかった、と言われたい。 」

決して逆転などできない社会。
「世間の論理」=付属学校のヒエラルキー、競争原理に貫かれた男社会の掟、
無限に張り巡らされた差別の構造。
それらへ向かい、戦いを挑み、 挫折に次ぐ挫折を繰り返す、主人公和恵。
和恵は頑張っていた。努力すれば報われる、と信じて。
和恵はとにかく、頑張ります。 それなのに彼女の努力は、何故か痛々しい。
なぜだろう…。決して勝てないと分かっているからかしら? 
小説全体から漂う人間不信も相まって、和恵には常に負の雰囲気が。
そして、和恵は壊れていきました。
やがて「怪物」へと変貌した彼女は、叫びます。
「光り輝く、夜のあたしを見てくれ」 と。
落ちれば落ちるほど、輝きながら高みに昇っていく主人公の壮絶な姿に
読んでいて言葉を無くしました。

「誰か声をかけて。あたしを誘ってください。
 お願いだから、あたしに優しい言葉をかけてください。
 綺麗だって言って、可愛いて言って。   お茶でも飲まないかって囁いて。」

本書は、見事なまでに和恵の崩壊する過程を、最後まで描いています。
一切、救いのない小説だ。 でも、女性なら読んでみるべき作品ではないだろうか。

 
実際の事件で容疑者となったのは、ネパール人の男性だったそうです。
ですが、この作品では中国人の設定になっています。
そして、中国という国の農村に生まれた人間の差別や、そこから這い出す壮絶さをも
本書では描かれています。

物凄いネガティブなパワー。 
そのパワーがギラギラと燃え上がり、炎上していくのです。
何とも言えない、毒という毒を、全部吐き出したような作品です。
読後、スッキリ感は、微塵も得られません。気持ち悪くて、吐き気がします。
そう、ただただ唸るばかりです・・・。


以前、ダーリンに「東電OL」の話をふったら
「頭がおかしいんでしょ?狂ってるんだよ」 と言われたことがありました。
そうかしら・・・? そんな単純なことなのかしら・・・?
どんな女性の中にも、その“芽”は潜んでいるのではないでしょうか。 もちろん私にも。

主人公の行動云々以上に、自分の中に恐ろしく、不気味な存在を感じたとき…
嗚呼! なんて「グロテスク」なんだ・・・ と、感じ入ってしまいました。


女性のグロテスクを、直視する勇気のある方は、是非どうぞ 。
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by merrygoround515 | 2007-02-20 10:21 | Book