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読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『家守綺譚』 梨木香歩

家守綺譚 (新潮文庫)
梨木 香歩 / / 新潮社
ISBN : 4101253374
スコア選択: ★★★★★





「それはついこのあいだ、ほんの百年すこしまえの物語」
概ね、明治三十年代後半のお話しになるのでしょう。

本書は、春夏秋冬、四季折々、花鳥風月…を、
絵に描いたような雰囲気を持つ。
小説というよりも…「随筆」って感じかな。「御伽噺」とも言えるかな。 
28の章から成るタイトル全て、植物名というのも、趣きがあります。
主人公が発するの日記のような口語体から、
日本語の素晴らしさに酔いしれ、時を忘れました。

物書きを生業に、早世した学友の実家に「家守」として暮している
主人公の綿貫征四郎。 
彼が連ねる日常は、繊細かつ美しく丁寧な言葉の数々。
例えば・・・
「吹きくる風に一筋の冷たい線が混じっている。
 初秋と呼ばれる季節になったのだ。 空が高い。 雲が薄い。 ・・・・・・」
「外の明るさに、和紙を濾過したような清澄さが感じられる。
 いいか、この明るさを、秋というのだ、と共に散歩をしながらゴローに教える。」
思わずうっとりしてしまう。

親友の高堂、隣のおかみさん、犬のゴロー、
和尚さん、後輩の山内、土耳古の村田、などなど
登場人物が皆良い。  良いのです。 
信じられない異空間の出来事が、違和感なく、自然に受け入れられる。
河童が出たり、子鬼が出たり、人魚がいたり…不思議なんです。 摩訶不思議。
でも、彼らには、なんて言うか、普通。 当たり前の日常なんです(苦笑)。

文庫で200ページ弱という短い作品だが、サラッとは読んではいけません。
まぁ、流し読みはできないと思いますが(笑)。 
すぐに周囲の雑踏が、静寂へと変わります。 
知らぬ間に、綿貫の時代の中に…
意識することなく、すんなりと入り込んでしまう作品なのです。
ゆっくりと時間をかけ、一言一句丁寧に読み進みたくなる作品ですよ。
心と体が疲れたとき、ふと読みたくなる一冊でもあるでしょう。 
癒し効果絶大です!
今後は、本書の普及活動に務めようと思います(本気です)。 

私も征四郎さんのように、
ゴローとその他諸々とともに、その時代で暮したい(笑)。


本書、2005年本屋大賞の第3位です。
ちなみに、第1位は『夜のピクニック』、 第2位は『明日の記憶』。

続く作品は、『村田エフェンディ滞土録』 (角川文庫)。
本書に登場する「土耳古の村田」さんのトルコ留学の青春物語だそうです。  
今度買いに行こう!



『家守綺譚』 の植物アルバムを作られた方がいらっしゃいます。
こちらです
by merrygoround515 | 2007-10-29 12:09 | Book