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by merrygoround515

『村田エフェンディ滞土録』 梨木香歩

村田エフェンディ滞土録 (角川文庫 な 48-1)
梨木 香歩 / / 角川書店
ISBN : 4043853017
スコア選択: ★★★★






まずタイトルについて。
「村田」とは、主人公の名前。
著者の作品 『家守綺譚』 の主人公・綿貫と高堂の友人(同窓生)だ。
本書の最後の最後で 『家守綺譚』 と一致する場面がある。
「エフェンディ」、これは本文中の説明をそのまま引用する。
「おもに学問を修めた人物に対する一種の敬称だが、彼からそう呼ばれると、
ちょうど日本で商売人が誰彼となく先生と呼ぶのと全く同じ印象を受ける」とある。
要するに、尊称であり、意味は「先生」って感じのものだ。
「滞土録(たいとろく)」の「土」は、「土耳古(トルコ)」の「ト」。
ということで、つまりは 『村田先生トルコ滞在録』 という意味になる。
また、本書の位置づけは、『家守綺譚』の姉妹編ってところ。

物語の時代は1899年(明治32年)。
村田は、トルコ政府の招聘によって、考古学の研究の為、トルコへ留学し
英国人女性(ディクソン夫人)の屋敷に下宿滞在している。
この屋敷には、村田のほかにも、
ドイツ人の学者「オットー」、ギリシア人の研究者「ディミィトリス」が下宿しており、
トルコ人の「ムハンマド」という男が、下働きをつとめている。
主だった登場人物はそんなところだが、
忘れてはならないのが、「ムハンマド」が拾ってき鸚鵡だ。
『家守綺譚』の犬のゴローのように、重要な役割を持ち、しっかりと全体を見渡している。

彼らの下宿には「神」もいる。
日本のお稲荷さんやエジプトの神(置物)を村田が持ってきたときは傑作だった。
お守りも置物もその都度、たまたまやってきただけなのに…
夜中に、壮大な覇権争いが巻き起こるんだもん。  アハハ
よそ者との縄張り争いで、八百万の神々が騒ぎだし… 五月蝿いのなんのて。
堪りかねた村田が、大声で説教すると…急に物音がやんだの。  シーン(笑)。
その様子がね、なんだか物凄く微笑ましかった。

本当に日記のような、生活感に溢れる描写で、日々村田をはじめ、
同居人が活き活きと生活し、鸚鵡が絶妙なタイミングで鳴くのだ(笑)。
いやぁ、鸚鵡って賢いんですね! 飼いたくなりそう。
村田の綴る日常の語り部は、とても臨場感があった。 見事です。

既読者なら、誰もが心にずっしりくるセリフ・・・
醤油を手に入れてくれたことに感激して、お礼をいう村田に…ディミトリアスは言います。

「私は人間である。およそ人間に関わることで私に無縁なことは一つもない。」

物語は次第に、第一次世界大戦へ向かっていきます。
また、土耳古という、西洋と東洋、そしてイスラム文化の接点のようなこの国の
歴史や時の流れの気配を、濃厚に感じます。
故に、宗教も文化も考え方も全く違う5人が、この宿で友情を育んでいく様子が、
とても、とても美しい。
後に、村田は考えます。   国とは、いったい何なのだろう。

ラストは、胸を打たれます。
「──ディスケ・ガウデーレ。」 ※①
「──友よ。」


『家守綺譚』 同様、余韻の深い作品でした。 
余談ですが、【味噌玉】※②  作ってみようかな。



※①=ラテン語で「楽しむことを学べ」 の意。
※②=兵糧食。
    削った鰹節を炒って粉末にし、葱と共に味噌に突き込んで球状に丸め、焼いたもの。
    お湯をかけ、味噌汁として食す。
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by merrygoround515 | 2007-12-08 00:45 | Book