読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『さくら』 西加奈子

さくら (小学館文庫 に 17-2)
西 加奈子 / / 小学館
ISBN : 4094082271
スコア選択: ★★★★





陶器のように美しい。 性格は明るく、常に笑顔を絶やさない。
その全身で家族を愛する母。
優しくてハンサムで働き者。無口だが確実に一家を支える存在の父。
生まれながらにして、ヒーロー。誰もが憧れ、誰からも慕われる。
人生の全てが「はじめレジェンド」になった兄「一」。
生まれながらの美女。誰もが必ず立ち止まり、振り返る超美形。
美しい顔とは裏腹に、
異常な喧嘩っ早さと野生児の感覚を持つ妹「ミキ(美貴)」。
「長谷川君の弟」「長谷川さんのお兄ちゃん」と言われ育った僕「薫」。
そして、
愛すべき上品な女の子(笑)タワシ好きな雑種犬の「サクラ」。
長谷川一家5人と1匹家族。

「僕(薫)」が、兄妹それぞれの際立った個性を、
時にユーモラスに、時にシリアスに、
しかし、いたって軽い口調で淡々と語り続ける物語。

まるで“幸せの魔法”にかけられていたような、
幸せだった5人と1匹の家族が・・・
兄の交通事故から、一変する・・・。


前半は、この家族が、
どれほどまでに幸せで、どんなに輝いていて、
どんなに眩しい家族だったかを…
これでもか、これでもか!と、読者にぶつけてくる。
兎に角、受け止めるのが、やっとこさだった(苦笑)。 
三人の子どもの成長過程はとても分かり易く、
アップテンポで爽快に綴られる。
父と母のラブラブぶりを惜しみなく披露し、
「サクラ」の発する言葉を交えながら、
まるで、そう・・・ 
映画を観ているような気持ちになった。 

どの登場人物にも、感情移入はできない。なのに、なのに、だ。
この西加奈子という作家の生み出す「魂」のような、
目に見えない強靭なモノに惹き付けられ、
この一家が、まるで存在している錯覚に陥る。
弾むような語り口に惹き付けられながら読み進むと、
「比喩」の魔法に驚かされる。そう、斬新な「比喩」の所為なのだ。 
次から次へと端的で、リズミカルで、決して装飾過多にはならない
美しい表現に気付けば魅了され、そしてはっきり実像化されていく。

中盤からは、
はっきり言って、一つの作品の中に詰め込むテーマが多すぎる。
只でさえ、彼らにはいろいろあるというのに…。
そしてこの終盤にきて、長男「一」が自殺した。 
そう言えばそうだったんだ…。 
と、我に返らされ、最終章では、泣きっぱなしだった。

作者が本書に籠めた「思い」の深さに見事、KO。

両親からとびっきりの愛情を受けて育った子どもは、
その愛されているという力が、やがて確信に代わり、
己の強さになるのだと感じた。
「家族愛」
それはどんな不幸をも乗り越えられる、唯一なのかもしれない。
本書ではペットではなく、家族である「サクラ」。
誰よりも冷静に愛情を理解していたのは「サクラ」かも知れないね。
「うふふ。」              合掌。


読後、実家の父や義母さん、
その他親戚付き合いをしている人からの「着信音」… 
「Top of the World」 になりました。
「うふふ。」



次は 『きいろいゾウ』にします。この作品は、絵本も欲しいなぁ。
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by merrygoround515 | 2007-12-20 12:11 | Book