読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『黒と茶の幻想』 上・下 恩田陸 (三月シリーズ)

黒と茶の幻想 (上) (講談社文庫)
恩田 陸 / / 講談社
ISBN : 4062749459


黒と茶の幻想 (下) (講談社文庫)
恩田 陸 / / 講談社
ISBN : 4062753618

スコア選択: ★★★★★ (上下で)







卒業から十数年を経て、友人の送別会をきっかけに集まった、
学生時代の同級生男女四人が、
屋久島(作中ではY島)への旅行を企画するところから始まります。
その後、企画は現実となり、四人が屋久島を旅する物語。
この四人が一人称で語り部になり、それぞれの視点で、
旅の目的や自己の現在、そして他の登場人物たちを描写していく構成。
順番は、「利枝子」→「彰彦」→「蒔生」→「節子」。 全四話。
しかし時間軸は交錯せず、旅の流れをそのまま追っていく流れです。
読者は彼等と共に、三泊四日の旅をすることになるのです。

この四人、なんと美男美女。
家柄、育ちともに良いお坊ちゃん、見目麗しく誰もが綺麗と評する、彰彦。
端整な顔立ちで、余り感情を表に出さない、クールでダンディな、蒔生。
清楚でほっそりした、日本的な品のよさを持つ才女、利枝子。
目鼻立ちも体型も完璧な美人、明るく、ハッキリした性格、節子。
その他の登場人物でも、女性はこれがまた美女なのだ。
お人形のような美しさの、女優、憂理。
男を虜にせずにはいられない、妖艶な美女、紫織。

本筋とは一切関係の無いことではあるが… 美男美女って
案外想像し易いことに、読後まず気付いたので(笑)。

内容は…何といったらいいのか、単純に言うと
四人の独白に近い語りが、延々と続いているだけ。
終始おしゃべりして、歩くだけ。
毎朝揃って、森へ行き、山へ入り、ひたすら歩いては、しゃべる。 
ホテルへ戻って食事して、飲みながら、またしゃべる。
四日間その繰り返し。 
旅行の目的自体が、森を歩き、登山をし、縄文杉(作中はJ杉)を見るだけなので。
日常を離れ、非日常を満喫し、それぞれの生活へ戻っていくことで、完結。
事件も、事故も、何も起こらない。 何一つ起こらない。

なのに、だ。

各登場人物が、仲間との会話によって自らの内面に深く潜り、
自らのルーツを探っていく、単純なのに、一級のエンターテインメント!
とにかく、深い。 人間の深さ、人生の重みをずっしりと感じます。
会話や回想、何気ないやりとりや、自然の描写から、
その場の空気まではっきりと浮かび上がらせる筆力は、さすがですね。
四人は皆、この旅によって人生をリセットした気がします。
 
彼等の旅には、「非日常」というテーマがありました。
このテーマを追考するために、彰彦は皆にある宿題を提案したんです。
『安楽椅子探偵紀行』にしよう、と。
そのために、「美しい謎」を皆で持ち寄り、解こう!と言う企画です。
旅行中、「美しい謎」解きが、ホテルや森の中で繰り広げられます。
森の中を歩きながら語られた謎の数ときたら! またその内容ときたら!
ゆうにアンソロジー1冊分はありますね。   本書、実に贅沢な作品だわ。
謎解き以外にも、著者の博識なウンチクの数々をも、心行くまで味わえます。


私は同世代の所為か、
利枝子、彰彦、蒔生、節子という登場人物たちが語る「さまざま」が、
いちいちリアルに胸に響いて、しょっ中ノスタルジックな気分に浸ってしまった。
読んでもらえば分かりますが、
最終章を蒔生ではなく節子の視点で語らせた構成が、憎いほど巧妙です。
文庫本上下で800頁に近い作品なのに、引き込まれたらあっという間。
読了間近になったとき、私は彼等との旅を終らせるのがイヤだった。
もっともっと、ずっと旅していたかった。 



これで、「三月シリーズ」四冊読了です。
 『黄昏の百合の骨』 が、あまりに素晴らしかったので、
本書はそれほど期待していなかったのだが、参りました。
本書の単行本、欲しいな。 近くに置いて、眺めていたい。
次は 『朝日のようにさわやかに』 の 「水晶の夜、翡翠の朝」 
うむむ。文庫落ち待ち・・・です。
(どうやら順番が違うらしいのですが、今更仕方がありません;;)

さて、実は2008年の読書スタートが本書。
新年早々、物凄く贅沢な読書ができました。
恩田さんのサービス精神にはホント、参ります。
今年一年間…もしかしたらこれ以上の作品には出会えないかもしれない。
いや、困った、困った。
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by merrygoround515 | 2008-01-09 14:26 | Book