読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『花の下にて春死なむ』 北森鴻

花の下にて春死なむ (講談社文庫)
北森 鴻 / / 講談社
ISBN : 4062733277
スコア選択: ★★★★






「香菜里屋」シリーズ 第一弾。 (シリーズは全4巻)
三軒茶屋のビアバー「香菜里屋」を舞台に、マスター・工藤哲也と常連客たちとの
日々の会話のやりとりから、様々な謎が展開され、その人生の悲哀を解き明かす。
マスター・工藤による、安楽椅子探偵もの。 全6編の連作短編集。

「花の下にて春死なむ」     常連客“飯島七緒”(フリーライター)が主人公。
戸籍を持たない一人の男性俳人・片岡魚草の死。
俳句仲間によってひっそりと葬儀が営まれる場面から始まった。
無縁仏となってしまった彼を、故郷へ帰してあげたい思いに駆られ、
七緒は、かつて彼が漏らした言葉とマスターの助言を手がかりに山口へと向かう・・・。
いきなりガツンと先制攻撃をくらいました。 
物凄くスケールの大きな真実に、ただただびっくり。

「家族写真」  常連客“野田克弥”(離婚歴の有るサラリーマン)が主人公。
マスターから常連客に一枚の新聞記事を見せることから、始まる。
真実は一つではない・・・。  真意は裏の裏まで読み通して、見えるものだった。
とても奥の深い、マスターの人柄を表した作品になっていた。

「終の棲み家」  常連客“妻木信彦”(カメラマン)が主人公。
多摩川の河川敷を撮影中、とあるきっかけで知り合った老夫婦の謎。
個人的には、本書で一番好きな物語だ。
河川敷に小屋を建て、ひっそりと暮らす老夫婦、彼らは妻木と出会い、何を感じたのか…。
妻木の写真展のポスターは、何故みな剥がされたのか・・・。
答えがわかったとき、哀しい思いと裏腹に、爽やかな涙が流れました。

「殺人者の赤い手」 常連客“笹口ひずる”(派遣プログラマー)が主人公。
ひずるが店に入ると、「香菜里屋」の近隣で殺人事件が起こったと聞かされる。
この事件と、この地に伝わる都市伝説「赤い手の魔人」に関連した謎が広がる。
この物語では、渋谷で街頭占い師をしている北君彦(通称ペイさん)という常連客と、
新参者として警官・百瀬健次が登場します。
七緒の推理を真ん中に、探偵団思しく事件の究明談話が繰り広げられ楽しい。
ひずると百瀬の展開に、密かに期待しているのです(笑)。

「七皿は多すぎる」  常連客“東山朋生”(古参)が主人公。
東山が、「回転寿司で鮪ばかりを七皿食べる男の謎」をマスターに話しだした。
すると、他の常連客、夕刊紙の記者・高林と占い師のペイさんもノリノリで参加し、
皆で謎解きがはじる。
又聞きの又聞きで進んでいく話の展開と東山の語り部にお腹が一杯になった。

「魚の交わり」 一話目同様、“飯島七緒”が主人公。
「香菜里屋」に、七緒宛の手紙が届いた。佐伯克美という鎌倉に住む見知らぬ者から…。
七緒の知らない30年前の魚草のことが書かれていた。
最後にこんなにも素敵な涙を流すことになろうとは。 人生の深さをヒシヒシと感じた。



忘れていたが、「香菜里屋」はビアバーなのだ。
4種類の度数の違うビール(上は13度から下は3度まで)を、
マスターが作り出す絶品料理と共に楽しめるのだ。 
思わず、謎解きを忘れ舌鼓を打ってしまったことも、多々あった(笑)。
サラリと流れるような文体に、魅力的な料理の数々。
読後は、お腹が一杯になりました。  
13度のビール、一度呑んでみたいな。
シリーズ残り3作、早目に購入して来よう!っと。


※第52回日本推理作家協会賞「短編」および「連作短編集」部門ダブル受賞作。
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by merrygoround515 | 2008-01-18 09:46 | Book