読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『私の男』 桜庭一樹

私の男
桜庭 一樹 / / 文藝春秋
ISBN : 4163264302
スコア選択: ★★★★







冒頭より
 私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。
 日暮れよりすこしはやく夜が降りてきた、午後六時過ぎの銀座、並木通り。
 彼のふるびだ革靴が、アスファルトを輝かせる水たまりを踏み荒らし、
 ためらいなく濡れながら近づいてくる。
 店先のウィンドウにくっついて雨宿りしていたわたしに、ぬすんだ傘を差しだした。
 その流れるような動きは、傘盗人なのに、落ちぶれた貴族のようにどこか優雅だった。
 これは、いっそうつくしい、と言い切ってもよい姿のようにわたしは思った。
 『けっこん、おめでとう。花』
 男が傘にわたしを入れて、肩を引きよせながら言った。


この冒頭から、
グイグイ惹き付けられ、みるみる引きずり込まれていった。
でも、読後は違った。 
あまりの嫌悪感に戸惑い…息苦しくなった。

本書は、時間を遡っていく構成のため、
ここであらすじを書いてしまっては面白くない。
非常に書きにくいのだが、大まかに、ね。
2008年6月、
結婚式を翌日に控えた24歳の主人公・花は、
養父・淳悟、婚約者の尾崎美郎と会食する。
一見すると幸福に思える風景は、花と淳悟が肉体関係を持っており、
さらに殺人事件にも関わっていたことが暗示されることで一転する。
時は1993年まで時間を遡り、
語り手を変えながら、二人の謎めいた過去を明らかにしていく。

当初私は、主人公の一人称だと勝手に思い込んでいて^^;
第二章からは、ただただ驚かされてしまった。
視点が変わり、時間が遡ることで、意外な真実が、判明していく。
時間の逆行という構成の上手さに、圧倒されてしまった。
各章を読み終わる度に、第一章に戻り確認してばかりだった(苦笑)。
そして、最後には、
2008年6月の第一章が、とんでもないことになるのだ。


思いっきり、好き嫌いが出る作品だと思う。
あまりにも背徳的だし、退廃的だ。
途轍もなく苦しい上に、重過ぎるのだ。
私自身、この父娘の生き様には共感できない。
けれど何故か、物語には共感できるという不思議な作品。
生々しい物語であるにも拘らず、無味乾燥な雰囲気があるのだ。
文章力は逸脱です。本好きなら一読の価値ありだと思う。

本書を好きか嫌いかと聞かれたら、正直言って、答えに悩む。
しかし、佳作であるとは答えたい。
だけど、「初」桜庭一樹が、この作品ではきっと引くでしょうね。
二番手、もしくは三番手辺りで、手にしていただきたい。

※第138回直木賞受賞作品。



本書の直前に読了したのが 『心臓と右手』 だったので、
座間味くんの健全な(笑)作品から、
もんどりうってダークで退廃的な世界に行ってしまった^^;


次は爽やかな作品を選ぼう。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 14:32 | Book