読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『デッドエンドの思い出』 よしもとばなな

デッドエンドの思い出 (文春文庫)
よしもと ばなな / / 文藝春秋
ISBN : 4167667029
スコア選択: ★★★★






よしもとばななさんを読んだのは大学生以来。
本書を手にしたきっかけは、書店でふっと…
合田ノブヨさんの装画の暖かい雰囲気が目に留まり、
あとがきに書かれた
「これまで書いた自分の作品の中で、いちばん好きです。
 これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。」
という著者の一文に惹かれて。

「哀しい予感」や「キッチン」。
「うたかた/サンクチュアリ」や「TSUGUMI」など
初期の作品は読破しています。
彼女の文章はとても優しい。 単に読み易いのではなくて、
ひと言ひと言に言霊を感じるのです。
ただ読み易いと感じる文体の作家さんは、大勢います。
でも、ばななさんはなんかこう…一味違うのですよね。
う~ん、私だけの感覚かもしれませんが^^;

今回、本書を読んで、サラッとした読後感だったのですが、
よくよく考えてみると(レビューにしようと思い立ち、思考してみると)
全5話の短編集なのですが、
なんとも悲惨な悲劇がベースになっていたことに気付き、
実に驚かされたんです。

「幽霊の家」 「おかあさーん!」 「あったかくなんかない」
「ともちゃんの幸せ」 「デッドエンドの思い出」  の全5編。
巻末には 「あとがき」 & 「文庫版あとがき」。

一話では、一酸化炭素中毒で死んだ老夫婦。
二話では、毒入りカレーを食べてしまった不運な出版社の女性編集員。
三話では、母親に無理心中させられてしまう少年。
四話では、母親から虐待を受けていた過去を持つ女性。
五話では、父親に幼少の頃、監禁された過去のある青年。
ほら、すごいでしょう^^;
日常とはかけ離れた悲劇のオンパレード。

でも、読み終わり、改めて考えてみると…。
それぞれの悲劇の感じ方、受け方が、悪くない。悪くないのだ。
ばななさんは、様々なネガティブな世界にいる主人公を、
闇雲にそこから脱却させようとするのではなく…
先ずは、悲劇の中にどっぷりと身を置くことを必要とし、
その中で、自然に浄化されるまで、浄化させるまで待たせるの。
自然な浄化によって、きちんと悲劇を受け入れて、乗り越えてから
生きて行く姿を、書きたいのだなぁ。 と、思いました。


五話の 「デッドエンド(袋小路)の思い出」 で、
主人公・横山ミミ(25歳)は、
婚約者からある意味では突然の(笑)、婚約破棄を言い渡されました。
現実を上手く受け止められず、しばし日常から逃れることを望みました。
そして、おじがオーナーをしているバー「袋小路」の2階に、仮住まいすることに。
そこで、お店の雇われ店長、西山君と出会ったのです。
彼は子どもの頃、母親に捨てられ、父親に軟禁生活を送らされた過去がある。

若くして何かを悟った感が漂う西山君がガイドとなり、
ミミは、新たな人生の一歩を踏み出すのです。 

この西山君の説得が、実に素晴らしい。
世間知らずだった自分を恥じるミミに、西山君は言いました。

「いい環境にいることを、恥じることはないよ。武器にしたほうがいいんだよ。
 もう持っているものなんだから。
 君は、帰って、またいつか誰かを好きになって、いい結婚をして、
 お父さんとお母さんと交流を絶やさず、妹とも仲いいままで、
 その場所で大きな輪を作っていけばいいんだ。
 君にはそういう力があるし、それが君の人生なんだから。
 誰にも恥じることもないよ。相手が君の人生からはじき出されたと思えばいい。」
グッときました^^;

ミミは西山君と別れ実家へ戻ると決めたとき、
どうしようもない気持ちだった私に神様がふわっとかけてくれた毛布のように、
たまたま訪れた日々なのだ…。 と、幸せいっぱいに感じました。
「一生感謝してるし、一生忘れない。」  
陽だまりを感じる物語でした。


本書は、作品としてとても暗い。
決してハッピーエンドとは言えない物語ばかり。
でも、前向きな姿勢は一貫しています。
それが全体を明るく、暖かいものに感じさせているのかしら、ね。


これが書けたので、小説家になってよかったと思いました。

この言葉の持つ“魔力”に魅せられました。
何度も読み返してしまう作品になりそうです。



次は、以前からちょっと気になっていた… 
『アルゼンチンババア』 を読んでみよう。 
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by merrygoround515 | 2008-02-16 12:47 | Book