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by merrygoround515

『きいろいゾウ』 西加奈子

きいろいゾウ (小学館文庫 に 17-3)
西 加奈子 / / 小学館
ISBN : 4094082514
スコア選択: ★★★★★




夫の名前は無辜 歩 (むこ あゆむ)、
妻の名前は妻利 愛子 (つまり あいこ)。
お互いを 「ムコさん」 「ツマ」 と呼び合う都会の若夫婦が、
田舎にやってきたところから物語は始まる。
背中に大きな鳥のタトゥーがある売れない小説家のムコは、
周囲の生き物(犬、蜘蛛、鳥、花、木など)の声が聞こえてしまう
過剰なエネルギーに溢れた明るいツマをやさしく見守っていた。
夏から始まった二人の話は、ゆっくりと進んでいくが、
ある冬の日、ムコはツマを残して東京へと向かう。
それは、背中の大きな鳥に纏わるある出来事に導かれてのものだった──。
(「BOOK」データベースより)


本書を一言でいうならば、極上の恋愛小説。 
ただただ、素晴らしかった。 たっぷり癒されました。

前半は村での暮らしぶりが楽しく展開される。
魅力的な登場人物が、物語をよりほんわかした雰囲気に導いている。
いつもズボンのチャックが「ぼっかり開いている」アレチさんと、セイカさんの老夫婦、
お隣の駒井さん夫婦とチャボのコソク、
そして駒井さん家で一時的に暮らしている、登校拒否の小学生・大地くん。
ムコさんが働く老人ホーム「しらかば園」の事務員、平井直子さんとその孫・洋子ちゃん。
洋子ちゃんは、都会から来た大地に、本気で恋しているんだ。
小さな村での小さな出来事が、ほのぼのとユーモアをもって描かれていて面白い。
また、ただでさえ大人びている大地くんが成長していく過程は、見逃せない!

ツマは、動植物と言葉を交わしたり、見えないものが見えるという、
不思議なチカラを持った人。
そしてそんなツマが、出会った犬や庭の木々につける名前が最高!
肝油ドロップの缶を、頭から被り、取れなくなったところを助けた犬は、カンユさん。
隣で飼われているチャボのコソク(姑息だからなのだ!)や、
海で出会ったゴールデンレトリバーは、飼い主の苗字(妻鹿)から、メガデス。
どこからこんな発想が出てくるんだろう。
また、名づけの場面が、笑えるのだ。(≧∇≦)ぶぁっはっはっ!!!

ツマが一人で、野良犬のカンユさんや蘇鉄のヨルと交わす会話は
とてもユニークであり、寂しげでもあり、そしてとても優しい。
時に幻想的でもあり、それがこの作品の大きな特長なのではないかな。

後半はぐっとシリアスな展開に変わる。
ムコさんがかつて愛した女性が前面に出てきて…
ツマの精神が日に日に病んでいく姿が徐々に描かれていく。
静かな恐怖も感じた。
ツマの心の奥底に潜んだ悩みやとまどいを、率直に表したところは、
実に読み応えがあった。
とても静かなのに、大きく、激しく心を揺さぶられるのが不思議だ。

そしてラストに向かって
「本当に大切なものなんて、たったひとつしかない」
そのことに、ふたりが気づく時がくるのだ(感涙)。



この作品を語るに、外せないのが、
挿入されている 「きいろいゾウ」 の童話だ。
この童話は、本篇の重要なキーとなっている。
なぜこの物語が挿入されているのか、最後に分かるのだが、
それは読んでのお楽しみ。 感動倍増の根源なのだ。
夫婦になって、
まだお互いに気付いてない奇跡があるなんて!素敵過ぎます。


※西さん、三冊読了。  「あおい」<「さくら」<「きいろいゾウ」  となりました。
※挿入された物語 『きいろいゾウ』 の絵本が刊行されました。
  欲しいなぁ。
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by merrygoround515 | 2008-03-26 12:27 | Book