読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

<   2008年 01月 ( 24 )   > この月の画像一覧

『Miss You 』 柴田よしき

Miss You (文春文庫)
柴田 よしき / / 文藝春秋
ISBN : 416720309X
スコア選択: ★★★★







有美は26歳。文芸編集者。
業界ではかけだしながら、生真面目さと熱意で
仕事は軌道にのりつつある。
しかし、同僚の女性が殺され、
元流行作家の奇妙な電話を受けてから
有美自身も狙われはじめた。
事故か。人ちがいなのか。
婚約者、新人作家、流行作家などの輪が
平凡なヒロインを目眩く翻弄する。待望のミステリー長篇。      
(「BOOK」データベースより)



中学・高校を女子校で過ごし、東大へ進学。
卒業後、大手出版社の編集者となった26歳の女性、
江口有美が主人公。
優秀で容姿端麗、性格も育ちもイイ。そして誰からも好かれている。
私生活も安泰。
交際相手からプロボーズされ、順調な人生を送っていた。
たが・・・
有美の周囲に奇妙な出来事が続き… というサスペンス物語。

大手出版社の文芸編集者の日常や、
作家デビューを巡る状況は、見事なまでのリアル感。 
まるで実状を描いているようだ。(描いたのでしょうね^^;)
作家になりたい、とうい志を持った人には…
ちょっとキツイ現実かもしれない。
本書に出て来る作家たちは、
他人に与える影響に恐怖を憶え、書けなくなった大御所作家。
書きたい“モノ”を盗まれ、核心が書けず、逃げ悩む新人作家。
小説に己が持つ本来の健やかさを奪われ、
最低な人間に成り下がった新鋭作家と、様々。
もちろん、真っ当な(笑)作家さんも登場していますが。
要するに、“書く“ということは、我が身を削り、曝け出す作業なのだ。
シアワセな人間には、小説など…書くことはできないのかもしれない。
まぁ、シアワセであれば、小説を書く必要はないのでしょうが。

文芸編集者である有美は、とても魅力的だ。
我が儘な人気作家や一風変わった新人作家たちに翻弄されたり、
事故や怪我などのハプニングから、我が身に不安を覚えながら、
自ら犯人探しを始め…理不尽な呪詛に立ち向かうのだ。
また、絵に描いたような優等生ぶりは突っ込みたくなるほど(笑)。
しかし東大卒なのに謙虚なのだ。 性格も多少天然で(笑)。
人間的にハングリー精神は、弱いタイプですね。
そんな有美が、編集者としても人間としても成長していく過程が、
本書の醍醐味だといえるのではないでしょうか。
他社の編集者と意気投合するラストシーンは、印象的です。 
柴田さんの芸の細かさ、好きだなぁ。

惜しむらくは… 
意外性に欠ける点。犯人が、よめてしまう人が多いはず。
でも、脇役一人一人にまで色と味を持たせているところや、
素晴らしい心理描写で、人間関係を見事に表現している巧妙さ、
展開のスピーディさは、抜群ですね。
流れるような優しい文体の中に、ミステリィが満載なので、
ノンストップで楽しめます。

人は、自分の知らないところで誰かを傷付けている…
これは、生きていく上で、防ぎようのないことなのだろう。
が、傷付けられた方は、忘れられず、次第に膿となり、
やがて悪意に変わる。 ついに放たれた悪意は……。
人間関係の難しさを痛感。

柴田女史、追いかけることに決めました!www




次作を決めるの当たって、ちょっと著者の作品を調べてみたのですが…
「猫探偵正太郎シリーズ」と「花咲慎一郎(ハナちゃん)シリーズ」に
好奇心が疼いています(笑)。
でも、大勢の方からオススメいただいた 『聖なる黒夜』(上・下) を楽しむため、
「RIKO」 「聖母の深き淵」 「月神の浅き夢」 の三作を、読んだ方がいいかしら。
う~ん、嬉しい悩みです、ね(^▽^)
先ずは一番に気なる 『フォー・ディア・ライフ』 で
ハナちゃんに会うことにしようかなぁ。 買ってこよ~☆  ルンルンo(*^▽^*)o~♪

あっ!昨年、読書家のブログ友さんに、本書の他に
『ミスティー・レイン』 と 『激流』 を読むと誓ったんだわ…(><;
『激流』 は、まだ文庫落ちしていないので…
『ミスティー・レイン』 (角川文庫)と 『フォー・ディア・ライフ』(講談社文庫) を買いましょ♡
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by merrygoround515 | 2008-01-31 09:56 | Book

『蛍坂』 北森鴻

螢坂 (講談社文庫)
北森 鴻 / / 講談社
ISBN : 4062758318
スコア選択: ★★★★





ビア・バー 「香菜里屋」シリーズ 第三弾。
マスター工藤が5つの謎を解き明かす、連作短編集。

毎度ながら、小さい店とはいえ、大繁盛。
一人で切り盛りしている工藤さん。
あなたには、目と耳がいくつあるのかしらん…?
それから前々から気になっていることがひとつ。
一体、ワインレッド色したヨークの刺繍入りエプロンを、
何枚お持ちなのでしょうか…?
決して判明し得ない疑問だとは、分かっています(笑)
一度言ってみたかったの。

本書、昨夜手にしました。連日ですねぇ。 
ええ、止まりません(笑)。     ∑(〃゚ o ゚〃) ハッ!!
『それが当店の陰謀なんです』    
  
   

「蛍坂」  元カメラマン有坂裕二。 (元彼女が常連客だった) 
16年前恋人・奈津実を残し、一人中東へ写真を撮りに行った有坂。
彼を待てずに結婚していた奈津実だが、5年前に事故死している。
ううむ、出だしにしては、重い。

「猫に恩返し」  タウン誌の編集人・仲河の話。
焼鳥屋で預かった一匹の黒猫の心温まる話を、タウン誌に採りあげた仲河。
すると店の面々から慰労碑の寄付を募る広告を頼まれる。
もしや、これは金集めの為のでっち上げだったのでは・・・?
猫の慰労碑問題が、とんでもない人情話に発展。奥が深い。

「雪待人」  元駅前の金物店主・南原の話。
駅前商店街の再開発に乗り遅れた老舗画材店が店を畳む。
南原は画材屋の一人娘と10年ぶり再会する。
彼女が皆に恨まれながらも同じ場所で待ち続けていたものとは・・・。
待ちきった彼女と待ちきれなかった彼。ちょっと切ない。

ここで、南原は工藤の薦めで香月へ行く。
そこで香月は工藤との関係を話します。「15年前に同じ店にいた」と。
そして工藤は「香菜里屋」で誰かをずっと待っているのだとも・・・。

「双貌」  常連客・多数登場!
同じ人でも服装髪型が違えば全く別の印象になる。
2つの貌を持つ人々をモチーフにした、作家秋津文彦の劇中作。
実に楽しい展開でした!ラストの余韻がタマラナイ。 ほっこり。
柏木彰が二次選考を通過した作品が…読みたい!

「孤拳」  ほぼ常連客・谷崎真澄の話。
病床の叔父(脩兄)との想い出、幻の焼酎”孤拳”を探したい。
真澄と脩兄のまっすぐな想いが切ないです。
真澄を傷つけまいとする香菜里屋の面々の優しさが沁みますね。
工藤さんをはじめ、石坂夫妻、有坂、七緒、東山…
そしてここでは、何といっても香月さん。 
可憐な物語です。 (゚ーÅ) ホロリ




次回作は最終話…。
だれかを待ち続けている工藤の過去が明らかになるのでしょうか。
知りたいような、知りたくないような。
知ってしまうと、香菜里屋も工藤も私の前から姿を消してしまう気がして、
哀しいかな、ちょっと怖い。

文庫落ち、気長に待ちます。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 17:00 | Book
明日の記憶 (光文社文庫)
荻原 浩 / / 光文社
ISBN : 4334743315
スコア選択: ★★★★







本書は、映画化にもなりました。
好きな作家であり、文庫落ちを心待ちにしていた作品でした。 
昨年秋、文庫落ちになり、喜び勇んで購入しました。
が、いざ入手してしまうと、満足してしまって・・・。
知らぬ間に、積読の仲間入りをしていましたorz


怖い。 記憶を失くすことほど怖いことはないかもしれない。

人間関係は、記憶がなければ成り立たない。
全ての感情も記憶があるからこそ、持てるもの。
そして、愛しいと思うことも、やはり記憶があるから。
これまで積み重ねてきた、人生そのものが、
徐々に欠落していき、記憶から消えていく恐怖を、
主人公の一人称で、抑えめの筆致で描かれていました。
とても読み易かった。 1時間半弱で読了していました。

広告代理店の営業部長である主人公・佐伯雅行(50歳)が、
“若年性アルツハイマー病”に罹り、日に日に悪化していく過程を、
職場や家庭、趣味の陶芸教室など、
日常生活の全体から、リアルに描いたものである。
アルツハイマー病の恐さを、否応なしに知らされました。
働き盛りの主人公・佐伯と、その妻・枝実子。娘夫婦…。
当事者のみならず周囲の計り知れない苦悩が、痛々しく辛い。
 
作中で描かれる、主人公の日記(備忘録)においても、
病気の進行過程を如実に描写しています。
あまりにリアルで…身につまされ、痛かった。

ラストは、そうですね… 
作品として見ると、哀しくもあるが、素敵だと、感じました。
グッときます。

この作品、映像化の方が、面白いかもしれない。
DVD借りてみようかなぁ。



※第18回山本周五郎賞受賞作。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 15:51 | Book

『私の男』 桜庭一樹

私の男
桜庭 一樹 / / 文藝春秋
ISBN : 4163264302
スコア選択: ★★★★







冒頭より
 私の男は、ぬすんだ傘をゆっくりと広げながら、こちらに歩いてきた。
 日暮れよりすこしはやく夜が降りてきた、午後六時過ぎの銀座、並木通り。
 彼のふるびだ革靴が、アスファルトを輝かせる水たまりを踏み荒らし、
 ためらいなく濡れながら近づいてくる。
 店先のウィンドウにくっついて雨宿りしていたわたしに、ぬすんだ傘を差しだした。
 その流れるような動きは、傘盗人なのに、落ちぶれた貴族のようにどこか優雅だった。
 これは、いっそうつくしい、と言い切ってもよい姿のようにわたしは思った。
 『けっこん、おめでとう。花』
 男が傘にわたしを入れて、肩を引きよせながら言った。


この冒頭から、
グイグイ惹き付けられ、みるみる引きずり込まれていった。
でも、読後は違った。 
あまりの嫌悪感に戸惑い…息苦しくなった。

本書は、時間を遡っていく構成のため、
ここであらすじを書いてしまっては面白くない。
非常に書きにくいのだが、大まかに、ね。
2008年6月、
結婚式を翌日に控えた24歳の主人公・花は、
養父・淳悟、婚約者の尾崎美郎と会食する。
一見すると幸福に思える風景は、花と淳悟が肉体関係を持っており、
さらに殺人事件にも関わっていたことが暗示されることで一転する。
時は1993年まで時間を遡り、
語り手を変えながら、二人の謎めいた過去を明らかにしていく。

当初私は、主人公の一人称だと勝手に思い込んでいて^^;
第二章からは、ただただ驚かされてしまった。
視点が変わり、時間が遡ることで、意外な真実が、判明していく。
時間の逆行という構成の上手さに、圧倒されてしまった。
各章を読み終わる度に、第一章に戻り確認してばかりだった(苦笑)。
そして、最後には、
2008年6月の第一章が、とんでもないことになるのだ。


思いっきり、好き嫌いが出る作品だと思う。
あまりにも背徳的だし、退廃的だ。
途轍もなく苦しい上に、重過ぎるのだ。
私自身、この父娘の生き様には共感できない。
けれど何故か、物語には共感できるという不思議な作品。
生々しい物語であるにも拘らず、無味乾燥な雰囲気があるのだ。
文章力は逸脱です。本好きなら一読の価値ありだと思う。

本書を好きか嫌いかと聞かれたら、正直言って、答えに悩む。
しかし、佳作であるとは答えたい。
だけど、「初」桜庭一樹が、この作品ではきっと引くでしょうね。
二番手、もしくは三番手辺りで、手にしていただきたい。

※第138回直木賞受賞作品。



本書の直前に読了したのが 『心臓と右手』 だったので、
座間味くんの健全な(笑)作品から、
もんどりうってダークで退廃的な世界に行ってしまった^^;


次は爽やかな作品を選ぼう。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 14:32 | Book
心臓と左手 座間味くんの推理 (カッパ・ノベルス)
石持 浅海 / / 光文社
ISBN : 4334076610
スコア選択: ★★★★






主な登場人物は、二人。
警視庁の大迫警視(ベテラン刑事)と、
11年前のハイジャック事件をきっかけに知り合った
「座間味くん」というニックネームをつけられた青年(30代半ば)。
偶然の再会後、親交を深めた二人は、時々待ち合わせては、
食事をします。酒を酌み交わしながらの話題は、
大迫による、すでに“終わった”事件の顛末。
大迫が座間味くんに、警察により解決した事件を語ると…
座間味くんの鋭い推理から、違った一面が垣間見えはじめ、
思いもよらなかった事件の別の姿が、次々とあらわになっていきます。
いわゆる「安楽椅子探偵モノ」。 
『月の扉』 の続編を含む、全7編の連作短編集。

特筆すべきは、
やはり「安楽椅子探偵」である座間味くんの存在。
その全てが魅力的なのだ。
常に冷静で、出しゃばらず、しかも頭がすこぶるキレる。
子煩悩で家族思い。仕事もきっとやり手なのだろうな。
奥さんと夫婦揃って沖縄が大好きで、ダイビングが趣味。
幼稚園に通う子どもと、10年後には沖縄へ行きたいと画策している。
一見大人しそうに見えるが、意外にもハッキリした性格なのだ。
残念ながら(前作同様)、最後まで彼の本名が
明かされることはなかった。 あくまでも「座間味くん」でした。

大迫警視と座間味くんが待ち合わせをするのは、
新宿の大型書店。 (二人が偶然に再会した場所である)
いつも、座間味くんが先に着ており、彼は雑誌のコーナーにいるのだ。
そこから、場所を移し、主に個室のある、料理屋へ直行します。
毎回、違ったお店に入るのですが、登場する料理の数々は、
高級で美味しそうなものばかり。 流石は大迫警視(笑)。
食欲をそそられること、間違いない。
空きっ腹には辛いので、空腹時の読書は避けた方がイイです(笑)。

最後に特筆しておきたいのは、真相の意外な壮大さです。
大迫によって、語られる事件からは、予想もつかないようなドラマが、
座間味くんの口から語られるのです。
よく、この小さな謎から、これほどまでの大きな真相へ物語を
膨らませられるものだなぁ、と感心させられました。
『月の扉』 が好きではなかったので、躊躇していた作品ですが、
爽快感に満ちた読みが楽しめました。 眼福眼福。 お腹も満腹。

是非、座間味くんには長編でも活躍して欲しい。



積読を確認したところ、『顔のない敵』 を発見!
次は、『顔のない敵』にしよーっと。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 14:20 | Book

『月の扉』 石持浅海

月の扉 (カッパ・ノベルス)
石持 浅海 / / 光文社
ISBN : 4334075339
スコア選択: ★★







読後、呆れてものが言えなくなった。
なんだこれ?
読むんじゃなかった。  
私には、「微妙」 のひと言に尽きる作品だ。

でも、書き残すことにした(笑)。
(実は、続編を読んでしまったからです…)


週明けに国際会議を控え、厳重な警戒下にあった那覇空港で
ハイジャック事件が発生した。
三人の犯行グループが、乳幼児を人質に取って乗客の自由を奪ったのだ。
彼らの要求はただひとつ、
那覇警察署に留置されている彼らの「師匠」石嶺孝志を、
空港滑走路まで「連れてくること」だった。
緊迫した状況の中、機内トイレで、乗客の死体が発見された。
誰が、なぜ、どのようにして──。
<裏表紙より>

補足を。
石嶺孝志は、不登校などの問題を抱える児童を、自らが主催するキャンプに
参加させることで、立ち直らせる“力”がある、カリスマ性を持った人間。
同じキャンプに参加している、
柿崎修、真鍋陽介、村上聡美は、彼を「師匠」と呼び、慕っていた。
しかし、そのキャンプを心良く思わない者がおり…
誘拐犯にされた、「師匠」は、逮捕されてしまう。

真壁、柿崎、聡美には、どうしても「師匠」石嶺に、
とある日時・時刻に沖縄のとある場所にいてもらう必要があった。
そして、旅客機のハイジャックを計画し、決行する。
ハイジャックするところまでは、上手くいったのだが…
機内では、三人には思いもよらぬ殺人事件が起こり…
二つのミステリが同時進行していく。
殺人事件は、たまたまこの飛行機に乗り合わせた青年(座間味くん)が
謎解きをするのだが、冗長。
石嶺もハイジャック犯の三人も、何処をとっても微妙。
座間味くん(本名は明かされていない。座間味と書かれたTシャツを着ていただけ)は
一味違ったキャラクタではあったが、特筆できるのは、頭がイイだけ。
微妙、微妙、微妙、微妙としか言いようがない作品だった。



どうでもイイ事だが、
沖縄で「皆既月食」が、見られる最大級のものは、3787年らしい。
私は、現実主義なのだ。
輪廻転生も、もちろんあちら側の世界も信じていない。
痛みも喜びも存在する、こちら側で生きていきます。

しかし、全く納得ができない作品だった。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 14:16 | Book
赤朽葉家の伝説
桜庭 一樹 / / 東京創元社
ISBN : 4488023932
スコア選択: ★★★★





1953年から21世紀までの
女三代に渡る赤朽葉家の盛衰記。

鳥取県紅緑村に、鉄鋼業で財を成した旧家・赤朽葉家。
のちに「千里眼奥様」と呼ばれるようになる万葉が、
義母になるタツに望まれ、赤朽葉家に輿入れする。
万葉は「山の人」と呼ばれる辺境の住人により、「山の民」に置き去られ、
紅緑村に住む夫婦の手で育てられた。
この赤朽葉万葉の物語(1953年~1975年)が、第一部。

第二部は、万葉の娘・毛鞠の物語(1979年~1998年)。
暴走族、レディース、総番、ポニーテール、裾をひきづるセーラー服と
時代は不良文化の真っ盛り。
暴走族「製鉄天使アイアンエンジェルス」を率いた毛鞠が、卒業後
その当時を描き、連載十二年の人気売れっ子漫画家となる物語。

第三部が、毛鞠の娘・瞳子(2000年~未来)の物語。
祖母や母と違い、平凡で、語るべき物語がない語り手のわたし。(ニート)
本書は第一部から第三部まで、この瞳子が語り手となり、
赤朽葉家に関し、祖母や母や家族から聞いた話を、物語っているのです。

本書がミステリィとしても評価されているのは…
瞳子が、万葉の死に際に「むかし、人を殺した」という一言を遺され、
祖母の人生を振り返るべく、赤朽葉家の歴史をひも解いていくことにあります。

ひと言で表すならば、大河ドラマのような本でした。
戦後の昭和から平成まで、
当時の世相や流行、出来事を追いながら、
強烈な個性を放つ登場人物たちが、ストーリーを引っ張っていく・・・
赤朽葉家の三代の女たちの一大絵巻。
三者三様の生きかた、存在感がリアルに描かれていて面白く読みました。
千里眼の祖母、漫画家の母、何者でもない”わたし”。 実に巧妙。流石ですね。
……とはいえ、第一部と第二部に比べると、明らかに…
第三部は失速していた感が、強く残りました。   ちょっと残念。


桜庭女史、初作品。 とても楽しく読めました。


※第60回日本推理作家協会賞受賞。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 13:58 | Book
ラッシュライフ (新潮文庫)
伊坂 幸太郎 / / 新潮社
ISBN : 4101250227
スコア選択: ★★★★






◆金にしか興味のない画廊経営者・戸田と、若き女性画家の志奈子が新幹線に乗る。
◆精神科医の京子は愛人のサッカー選手青山と、お互いの配偶者を殺す計画を立てる。
◆リストラされ就職先が見つからない豊田は、ふとしたことで拳銃を手に入れる。
◆同級生佐々岡との奇妙な再開を果たす泥棒の黒澤は、仲間からの強盗の誘いを断る。
◆新興宗教の教祖・高橋を「解体」しようとする塚本と、それにかりだされた河原崎は死体を絵に描く。

それぞれ、全く異なる境遇にある登場人物たちが、互いに影響しあい、
ラストへ収縮する様はさすがだ。 見事なまでの到達。
また、物語が展開していくほどに、
まるでエッシャーの騙し絵の中に取り込まれたような…
なんとも奇妙な感覚に陥るのだ。

伊坂氏、本当に天才なんだね。  一生ついて行くわ!
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by merrygoround515 | 2008-01-29 10:33 | Book
枕草子REMIX (新潮文庫 さ 23-7)
酒井 順子 / / 新潮社
ISBN : 4101351171
スコア選択: ★★★★





誰もが古文の授業で必ず習う「枕草子」。
実のところ作者、清少納言については、殆ど知らなかった。
源氏物語ほどメジャーでないことも、影響あったかな。
そんな大した知識を持たない私には、最高の手引き書でした。\^○^/

著者と清少納言の対談(もちろん、おもいっきりフィクションです)を
ところどころに入れ込むセンスは流石です(笑)
「枕草子」の世界と、清少納言、作品の背景となる平安時代について
軽やかに語るエッセイ集。 清少納言にちなんだ京都ガイド付き。

「枕草子」を1段ずつ訳すのではなく、
必要に応じて、部分部分を抜粋(=REMIX)して紹介しています。
今までになかった斬新な紹介で、何よりとても楽しい一冊です。

一番面白く読んだのは、和歌について語っている部分。
ここで著者は、
平安時代の和歌は、現代のカメラ付き携帯電話のような役割を
していたのではないかと言っています。
この比較、とても面白かった。
現代の感覚に照らし合わせた平安の習慣の解釈、いやぁ~面白い。

平安時代には、
外出先で感じたことを、和歌に詠み、
日々の生活の中で、美しい!面白い!など、感じたことを和歌に詠んだ。
1000年以上の時がながれ…
現代の私たちは、実況中継のような状況報告や、
感動したことの数々を、携帯メールで送っています。

和歌も携帯メールも、心が動いたことに対して、
その気持ちを誰かと共有したい、という思いから
スタートしているところが、同じなのだそうです。
要するに、
≪カメラで写真に撮る≫代わりに≪和歌を詠んでいた≫ということ。

さらには、携帯メールを送った相手から、返信を期待するところも、和歌と同じ。
返信メールを出すときに
「何か気の利いた言葉の一つも返さねばならず、そのプレッシャーというか面倒さ」は
和歌の返歌にも通じるのではないか、
さらに送ってきた相手が大事な人ではない場合は
「”別に急がなくてもいいか”と思えてしまうのも、昔も今も変わらぬ点」
という著者の指摘も、とても面白く読めました。 ( ゜ー゜)( 。_。)ウン♪


清少納言は
お洒落で 賢く ミーハーで 意地悪
そんな人だそうです。
まさに現代っ子と同じだわ(笑)


因みに著者と清少納言は、ちょうどピッタリ1000年の年の差だそうです。
1966年生まれの著者と966年生まれの清少納言… 凄い!



「枕草子」入門書として、最適です。
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by merrygoround515 | 2008-01-29 09:18 | Book

『桜宵』 北森鴻

桜宵 (講談社文庫)
北森 鴻 / / 講談社
ISBN : 4062753693
スコア選択: ★★★★






昨夜、疲れていたのですが…
まだ眠るには少し早いかな?と感じていたので
何の気なしに、手にしてしまった、本書。
いやはや、なんとまぁ、気付いたら読了してしまった^^;

ビア・バー 「香菜里屋」シリーズ 第二弾。 全5編の連作短編集。 
今回は、とにかく料理が素晴らしかった。  流石は北森氏。 


特筆したい見所は、
マスター工藤の友人であり、旧知の仲であるバーマン香月圭吾の登場です。
≪バー香月≫を営む香月は、自らの店を「プロフェッショナル・バー」と標榜しているのだ!
第四話「旅人の真実」に登場します。
でも、この二人は、いつから、どんな友人なのやら… 
具体的にはされていないので、さっぱり分からない;;
今後の作品で明らかになるのかしら? 興味津々です。



「十五周年」  常連客、タクシー運転手の日浦映一の話。
故郷(花巻)で贔屓にしていた居酒屋の15周年パーティーに招待された日浦。
しかし、知った顔もなく、居心地も悪い。
5年前に故郷を離れた自分が、なぜ招待されたのか・・・ 
常連の東山も同様な披露宴に招待されて、首を捻っていた・・・

「桜宵」   新座署の神崎守衛の話。
亡くなった妻・芙佐子の残した手紙を見て、一人「香菜里屋」をたずねる。
亡くなった妻からの最後の手紙、そこには
最後のプレゼントは「香菜里屋」に用意されていると、記されている・・・
5年前の事件の容疑者・高任由利江の不思議な行動の話しになり・・・
桜飯に託された妻の想いとは・・・         感動を誘います。

「犬のお告げ」  常連客、際波美野里と石坂修の話。(修は東山の甥っ子)
修の会社の人事、湯浅部長が≪悪魔のリストランテ≫と異名をとるリストラ要員選びの
ホームパーティーを毎週開いているらしい。
部長宅の愛犬に、噛まれたらリストラという恐怖のホームパーティーらしい。
果たして修のところにも招待状がやってきたが・・・
シャンパンを抜くタイミングといい、銘柄といい(笑)、工藤さん!素敵だわ。
お二人の幸せを、心から祈ります。

「旅人の真実」   広末貴史(飛び込み客)の謎を常連客のライター・七緒が調べるお話。
突然やってきて「金色のカクテル」を依頼し、満足せず捨てぜりふを吐いて去っていく男。
一人の男の悲劇的な結末でした。依存って、怖いなぁ。
「黄金のカクテル」を追い求める青年の謎よりも、先に記述した、二人のバーマンの関係の
方がずっと、気になります・・・^^;

「約束」   日浦の店での、工藤の話。
年末に、「香菜里屋」の水まわりの工事を行うことになり、休暇をとることにした工藤。
工藤は、花巻の日浦の店「千石」をたずねる。そのまま工藤は助っ人に入ることに。
ある日、ベストセラー作家の土方と古い知り合いの女性がやってきた。
聞くと、二人は10年ぶりの再会で、たった一つの旅の思い出、それがこの店だったらしい。
締めくくりにあえて充てたのか、とてもインパクトの強い作品。 悪意の極み。

「困るのです。わたしの作る料理に、調味料以外のものを入れられては」
物静かな、工藤の口から、思いのほか放たれた力強いセリフに・・・
この後の激しい口調に…  胸がスッとしました。



さて、次は 『蛍坂』 ですね。 ちゃんと食後に手にします^^;
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by merrygoround515 | 2008-01-28 12:40 | Book