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読書日記及び過去の読書         〆(・_・ )メモメモ


by merrygoround515

『暗いところで待ち合わせ』 乙一 (白乙一)

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)
乙一 / / 幻冬舎
ISBN : 4344402146
スコア選択: ★★★★






物語は、全盲の女性ミチルの生活から始まった。
彼女は三年前に事故に遭い、視力を失った。
それ以前は見えていたので、
自宅では、見えているような生活が可能なのだ。
両親は離婚しており、彼女は父と二人暮らしだった。
だが父は、一年前に脳卒中で倒れ、他界してしまった。
以来、一人きりで引き篭り生活を送っているミチル。

そこへ、駅のホームで起きた殺人事件の容疑をかけられた
アキヒロが転がり込む。
といっても、アキヒロはミチルの目が見えないことを
知った上で、潜り込んだのだ。

そこから、奇天烈な同棲生活が展開します。


何が上手いって、ミチルの家の中での2人の心理描写。
このお互いの心理描写は、鳥肌モノです。
息をひそめ、自分の存在をミチルに悟られないように、
常に緊張し、膝を抱えるアキヒロ。
しかし、他人の存在に途中から気づき始めるミチル。
その後、2人は少しずつ…
まるで糸を手繰り寄せるかのように気持ちが近づいて行く。
その様子が、言葉では言い表せないほど素晴らしい。
最高に魅せられた。

言葉のない奇妙な二人生活なのに、お互いを思いやる気持ちが
優しくて、暖かくて、また切ない。
端々から奇妙な連帯感がしっかりと伝わってくる。
会話がないことって、なかなかスリリングだ。
この二人、タイプが似ているんですよね。 とっても。

物語が、アキヒロとミチル両者の視点から構成されているため
二人に感情移入がスルっとできて、あっという間に
乙一ワールドに入り込んでしまった。

ラストはありきたりかな?と高を括っていたのだが、
参りました。
ラストまでの数分間、頁を捲る手が止まらなかった。
何時死んでもイイと、落胆的だったミチルに
「生」への希望の光が照らされた気がします。


次は『失はれる物語』を読んでみたいと思う。
白乙一、お気に入りです。
by merrygoround515 | 2007-11-20 09:39 | Book